2018年10月27日(土)


質問

結城先生の「時はめぐる」を拝読させていただきました。

自分は現在31歳ですが、結城先生が「時はめぐる」で吐露されてるように、自分が本当は何がしたいのか、何をすべきなのか、がよくわかりません。

数学を勉強していても長続きせず、スマホゲームをするのも楽しいのですが、自分が本当にやりたいこととは違う気もします。

「時はめぐる」に書かれていたのと同じように、今日思いついた何かではなく、おとといもして昨日もして今日もして明日もする「なにか」。自分もそれを見つけたいのです!

何かそのような「生きがい」を見つけるにはどうすればいいのでしょうか。現在、自分が多少身につけたものは、数学、プログラミング、東洋の占い、囲碁、スピリチュアリズムなどがありますが、どれも中途半端です……

何かご助言をいただければ幸いです。よろしくお願いします。

回答

ご質問ありがとうございます。

私には「こうすればいい」という助言は難しいです。人生そのものになりますから。なので、助言というよりも、結城自身のことを少しお話しします。

私自身の大きな転機としては「就職」と「結婚」と「洗礼」があったと思います。

といっても「就職」で何かがガラッと変わったというわけではありません。就職によって、生活の基盤を少しずつ作っていったというほどの意味です。就職はまた、社会的な存在としての自分を確立するという意味もありました。内容はなんであれ、ともかく私は社会と繋がっている、と。

「結婚」はもちろん大きな意味がありました。生活自体が変わりましたし、自分の人生に愛する人、愛してくれる人が存在するというのは大きいです。ともかく何かを前に進めなくてはいけないという気持ちと、理想論だけではなく地に足を付けて進まねば、安易に自分を崩してはいけないという気持ちなど。

「洗礼」は内面的に非常に大きな意味があります。聖書を読み、自分の身勝手さと弱さをよく理解し、その上でキリストの救いを知り、自分のものにすることは重要でした。「宗教」というくくりにすると、まるで自分が宗教をファッションのように選べる錯覚に陥りますが、それは違っていました。

キリストを信じ、洗礼を受けることを通して「自分が頭で考えていた理屈を越えたところにあるもの」を理解していきました。すなわち自分が存在する意味や、自分の役割や、命の重みなどの実感としての理解に繋がっていったと思います。

「就職」が社会との繋がりであり、「結婚」が愛する人との繋がりであるとするならば、「洗礼」で私は神さまと繋がり、そして本来の私自身と繋がることができたといえます。

信仰を持ち、洗礼を受けるまでは「自分が何をするか」という意識が強くありました。でも社会や、愛する人や、自分自身と繋がっている時期が長くなるにつれて「自分とは何者か」という方に意識が向かうようになりました。「自分が何をするか」や「何をできるか」というのはもちろん大事なことですが、「自分とは何者か」という問いに比べたら些末なことでもあるのです。

自分とは何者か。この問いは大切です。自分が何をするかというのは、その問いに対する答えを探るための手段もしくは方法なのです。私はキリストを信じ、洗礼を受ける中で「自分とは何者か」という問いに対する答えに触れました。

自分は、偶然に生まれた存在ではない。神さまによって創られた存在である。仮に、世界中の人から憎まれたとしても、私は神さまに愛されている。神さまは私のための計画を持っておられるので、安心して進めばいい。信頼して進めばいい。

私は限られた能力を持つ存在だから、失敗もするし、間違いも犯す。そのときには大胆に悔い改めて、神さまからゆるしていただく。キリストの十字架の約束があるので、私はこの世での命を終えたあとは天国に行くことが確実に保証されている。

聖書が教えてくれるこれらのことは、私が人生を思い切り生きるための糧となりました。

いつも喜び、たえず祈り、すべてに感謝して生きる人生。私は信仰を通してそれを知り、洗礼を受けて自分のものとすることができました。

もちろんこれからもしょっちゅう悩んだり、失敗することを繰り返すでしょう。けれど、私はそのたびごとに聖書に帰り、イエスキリストの名によって神さまにゆるしていただき、また新たな気持ちで人生に向かうでしょう。少なくともそのように生きたいと私は願っています。

あなたへの助言ではありませんが、以上が私の人生に起こり、起こっていることです。ご質問ありがとうございました。

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結城浩(ゆうき・ひろし) @hyuki

『数学ガール』作者。 結城メルマガWeb連載を毎週書いてます。 文章書きとプログラミングが好きなクリスチャン。2014年日本数学会出版賞受賞。

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