数学には命題、公理、定理、補題、系といった用語が出てきますが、簡単に説明してください。
ざっくり書きます。
少し整理しましょうか。
「公理・定理・補題・系」は、すべて「命題」です。
「定理・補題・系」は、すべて「定理」です。
「公理」と「定理・補題・系」との違いは、証明する必要があるかどうかです。「公理」は証明の大前提となる土台のようなもので、証明する必要はありません。
証明する必要がある命題に「定理・補題・系」の三種類がありますが、これは気持ちの問題といえば気持ちの問題です。でも、この区別があると数学書を読むときの手掛かりとなります。
数学の本でときどき次のようなパターンを見かけます。
①命題Xを証明したいなあ。
②基本的な概念の定義をいくつか出しましょう。
③定理をいくつか証明しましょう。
④新しい概念が定義しましょう。
⑤補題を証明しましょう。
⑥輝かしい定理Yが証明できました。
あれ?当初の目的である命題Xは証明しないのかな、と思ったところで、
⑦定理Yの系として命題Xが一行で証明される。
となるんですね。
大きな定理を証明するよりも、みんなから便利に使われる補題を証明したいという言葉を聞いたことがあります。
ところで、数理論理学になると、これらの用語は別の意味で使われるので混乱する場合がありますのでご注意ください。『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』では「形式的」というプレフィックスを付けて混乱をやや回避しようとしています。「定理」と「形式的定理」のように。
なお「公理系」と「系」はまったく違います。「公理系」はいくつかの公理の集まりのことで、「系」は「定理から比較的容易に導ける定理」です。「公理系」の系はsystemで、「系」はcorollaryです。
ちなみに、物理学での「系」と数学での「系」は違う意味です。物理学では「現在注目している互いに関わり合うものたち」をまとめて「系」と呼びます。たとえば力学で互いに力を及ぼし合っている質点全体のことなど。こちらの系はsystemだと思います。