発端はこちらのツイート。 https://twitter.com/tenapyon/status/873172118665519104 これを読んで少しずつ考えていくお話。
最初は素朴に「\(x\)の関数\(e^{x/2}\)は\(x\)で無限回微分可能で、その無限階導関数は定数関数\(0\)である」という答えを考えていました。
そのあと、かがみさんから考えるヒントをいただき、もう少しちゃんと考えました。
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以下、実数全体から実数全体への関数のみを扱う。
関数列\(f_0(x),f_1(x),f_2(x),\ldots\)が与えられたとする。任意の実数\(r\)に対し、数列\(f_0(r),f_1(r),f_2(r),\ldots\)がある実数\(f(r)\)に収束するとき、関数列\(f_0(x),f_1(x),f_2(x),\ldots\)は実数上で関数\(f(x)\)に各点収束すると呼ぶ。
関数\(g(x)=e^{x/2}\)とすると、関数\(g(x)\)は任意回数微分可能である。このとき関数列\(g(x),g'(x),g''(x),\ldots\)は実数上で定数関数\(0\)に各点収束する。
各点収束では\(r\)ごとに収束性を確かめることに注意しよう。すなわち\(\epsilon N\)論法における\(N\)が\(r\)ごとに異なっていてもかまわない。一様収束では\(N\)を先に決める。より正確には以下の式参照。
各点収束: \[ \forall \epsilon>0 \,\,\forall r\in\mathbb R \,\,\exists N \in \mathbb N \,\left[\,n > N \Rightarrow |f_n(r) - f(r)| < \epsilon \,\right] \] 一様収束: \[ \forall \epsilon>0 \,\,\exists N \in\mathbb N \,\,\forall r \in \mathbb R\, \left[\,n > N \Rightarrow |f_n(r) - f(r)| < \epsilon \,\right] \]
ここから自然に出てくる問題は、 (1)\(e^{x/2}\)は各点収束することを示せ。 (2)\(e^{x/2}\)は一様収束しないことを示せ。 (3)関数列\(f_0(x),f_1(x),f_2(x),\ldots\)が一様収束するならば、各点収束することを示せ。 (4)連続関数列が一様収束するとき、極限の関数は連続になるか。 などでしょうか。
各点収束と一様収束の定義で\(\exists\)と\(\forall\)が入れ替わるところに論理式のメリットを強く感じます。自然言語だと説明しにくいところを明確に区別しつつも、類似性があることも表現されるため。
「一様収束するなら各点収束する」というのは、(関数や収束のことは何ひとつ知らなくても)論理式の操作だけで証明できるはずですよね。
https://twitter.com/tenapyon/status/873387116012609536
殿下の《超準モデル》をヒントに考えているのだが、よくわからない。たとえば自然数\(N\)に対して、任意の自然数より大きい元\(\omega\)を考えるのと同じようにして、\(\omega\)階導関数を考えるということだろうか…
殿下から返事。
https://twitter.com/tenapyon/status/873434066925662212
「無限階導関数」というと、\(n \to \infty\)の極限を考えるのが自然だけれど、超限順序数を考え、それに対する割り算を考え、剰余による分類を考えることができる、と理解しました。
\(n \to \infty\)の極限としての無限だけをイメージすると、大きくなる/小さくなる/何かに近づくということだけを想起しがち。でも、そのような(いわば解析的な?)性質を越えた性質を論じることができるというのは驚きでもあり、興味をそそります。
そういえば、数学者のくるるさんとお知り合いになったきっかけも似たような話題でした。超限順序数\(\omega\)は偶数か奇数かという話題でやりとりをしたのでした。以下のページからリンクがたどれます。
なぜ\(\omega\)は偶数か http://d.hatena.ne.jp/kururu_goedel/20060617/1150525072
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蛇足:「無限回微分する」や「無限階導関数」という表現は、わざとふわっと書かれたものなので、その用語が何を意味するか(何を意味することにするか)という定義から考える必要があります。というか、そこを考えるのが楽しい。
「唯一無二の用語とその定義があって、それを暗記する」という態度ではなく、「その用語が意味するところをこのように定義すると、こんなにおもしろいことが導ける」という態度を取ると、数学愛好者にとっての数学はとても楽しくなります。「無限」という用語はその最たるものかもしれませんね。もちろん、でたらめな定義をしたらすぐに矛盾が出てきてしまうわけですが。